誉田千尋《117》

2025年10月17日から20日まで、渋谷?イメージフォーラム3F「寺山修司」で、誉田千尋さんの個展《117》が開催されます。10月17日には映画監督の川添彩さんをゲストに迎えたアーティストトークが開催されます。
映画が上映され、電話が登場し、出演者がいて観客がいる。ここはミニシアターだろうか? しかしこれは映画でなく、電話でもなく、出演者でもなく観客でもない。時間だけ現実? 否。デジタルトランスフォーメーションは、見た目を変えずに世界を裏返して繋ぎ直す。いま現実とは何か?
- 松井茂(詩人、IAMAS教授)
多くの実験的な映像作品の音響を手掛けてきた誉田は、聴取の体験がもたらす「いま、ここ」の感覚と、それを強化するために行使されるさまざまな「技法」に関心を抱いてきました。この技法とは、遠い過去の出来事や知覚できない対象をありありと現前させるための巧妙な語り=レトリックであり、その延長線上にある様々な媒体による演出を指しています。
いっぽうで、映画?録音?通信さらには標準時刻のような近代的な諸「技術」は、時間と空間を超えた同期の経験を私たちにもたらしました。インターネットが生活に欠かせないインフラとなった今日、その同期の精緻さはますます加速しているかのようです。
NTTの電話時報サービスを題材にしたインスタレーション《117》は、こうした「技法」と「技術」の絡み合いから生まれる摩訶不思議な「いま、ここ」の感覚を、ユーモアと批評精神をもって提示する「実験映画」です。それはサウンドデザインの実践と逸脱をとおして、情報社会のアクチュアルな問題系へと私たちを接続します。誉田千尋《117》イントロダクションより引用